第1話
――幼い頃から私は、たまに”私”の姿を見かけることがあった。
買い物に出かけ、母に手を引かれるままに歩く私はふとした時にこう言うのだ。
「おかーさん。あそこ、私がいる! ほら、あそこ!!」
ただ歩いていたり、遊んでいたり、何かを食べていたりと、その時々で違うことをしている自分と瓜二つの存在。
どこか薄ぼんやりとかすむ自身の虚像に、幼い私ははしゃぐように指差して母に訴えかける。
またか、と。うんざりした顔の母は言われるままに指先を追って、そして深く深くため息をつく。
「咲ちゃん、そういう事は外で言っちゃダメって、言ってあるでしょう?」
「あ……ごめんなさい……」
けれど期待とは大きく異なり、母から返ってくるのはどこか突き放したセリフだった。
どうやら母には”私”が見えていないらしい。
最初の頃は「なんでそんな嘘をつくの!!」と怒られ、ムキになった私が「だってそこにいるんだもん!」と返してよく言い合いになったものだ。
何故なら私には見えているのだから。
そして何より、母に相手をしてもらえない”私”が可哀想だった。
きっと母は何か勘違いしているのだと、私は正義感を燃やしてはなんとか”私”の事を教えてあげようと手を尽くした。
私が頑張れば頑張るほど、母の精神力が削れていく事に当時の私は気付けていなかった。
程なく――腫れ物でも触るような、どこか怯えた母の表情を見たあたりで、私は子供心に良くないことだと口を塞いだ。
――その時見ていた”私”の姿が”未来の私”だと分かったのは、それからずっとずっと後の事だ。
未来と言っても、一ヶ月以内といった直近の未来。
私には一種の予知能力があると結論付けたが、『ごくありふれた日常の一コマをたまに見かける』程度では何の役にも立たない。
幸い、役に立たないだけで害はないので、数日に一回程度のその出来事は自然と無視する癖がついた。
またか。そう思う程度には未来の自分と折り合いがつき始めた14歳の春。
――私は、信じられない光景を見ることになった。
*****
新年度に入って一週間。
クリーニングしたばかりの制服を着ていることも相まって、心機一転という気分だった。
良い機会だから何か始めてみようと思い立ち、箕輪 咲は「朝一番に登校する」ことを始めた。
生徒のいない静寂な学校の門をくぐるのはどこか清々しい。まるで自分だけの世界のような感じがして、今日一日が全て上手くいきそうな気がしてくるのだ。
「……あれ?」
いい気分に浸りながら校舎に足を踏み入れると、下駄箱の前に先客がいた。
後ろ姿で誰かは分からないが、同じクラスの女子がちょうど上履きに履き替えているところだった。
(あちゃー……、先を越されたか)
朝一番の連続登校記録が早々に崩れたことに肩を落とし、いやいや、そこで卑屈になってはいかんだろうと思い直す。
後ろ姿で誰か分からないということは、たぶん新しく同じクラスになった娘だ。
咲と似たような背丈で、しかも同じ黒髪のショートボブ。何となく親近感を覚える相手で、これはむしろ仲良くなるチャンスだ。
咲は声をかけようと右手を挙げ――たところで、その女子が急にキョロキョロしだした。
その時に顔が見えて、ようやく咲は相手の正体に気付く。
(なんだ、”私”じゃん)
これは、いつものアレだ。
よく見れば全身の輪郭がぼやけている上に、向こうも目の前にいる咲に気付きもしない。
似ている以前に自分なのだから、親近感も何もなかった。
下駄箱の前で挙動不審な未来の自分は、辺りをしばらく確認して一息ついていた。
そしておもむろにスカートの中に手を入れ――
「え!? ちょ、ちょっと待って、何してんの!?」
唖然とする咲の目の前で、素早く下着を下ろし、右足、左足と引き抜いていく。
ライトブルーのパンティをくるくると丸めてスカートのポケットに突っ込み、未来の自分は小走りに階段を上っていった。
「何、なの?」
あっという間の出来事に頭がついて行かず、咲はぼんやりと立ち尽くしていた。
いったい、今のは何だったのか。何を思ってこんなことをしたのだろう。
(――あ)
いや、それ以上の問題がある。
あれは「未来の自分」なのだ。つまり、咲は遠からず同じ事をここでやることに――。
(ないない。絶対、有り得ない。バカらしい)
頭を左右に振って、ゾクッと走った悪寒と共に雑念を追い払う。
急かすように靴を履き替えて、よし、と顔を上げた。数歩歩いたところでふと振り返り、玄関口の全景を視界に捉える。
そこには誰もいない、静寂な空間が広がっていた。
(……確かに、誰もいないけどさぁ)
やっぱり、有り得ない。
考えるまでもないと鼻を鳴らし、咲はその場を後にした。
第一話ここまで
第一話
未来視できる少女が見た、自分の露出行為
第二話
教室で全裸露出プレイを楽しむ未来の咲
第三話
コートの下は全裸な露出狂のお姉さん
第四話
美人なお姉さんが露出する理由
第五話
露出狂への階段を登る少女
第六話
ついに下着を脱いでノーパンになる女子中学生
第七話
トイレで全裸露出する未来の自分からの露出のお誘い
第八話
露出狂なお姉さんへのほのかな憧れを胸に、教室で脱ぎ出す少女
第九話
校内で全裸露出する咲ちゃん14歳
第十話
超絶ピンチ!!露出プレイを楽しんでいたら、人が来たよ!
第十一話
女子中学生が教室でオナニー、そのまま絶頂へ!
第十二話
下半身を露出したままで教室で教師とご対面
第十三話
数年後、コートを羽織った露出狂の女がそこに
最終話