第8話
少しばかり体調が優れず、紀子は部活を抜けて来たらしい。
咲と紀子は二人、トイレから教室へ続く廊下をパタパタと歩く。
ごく一部の生徒を除いてまだ登校してきていないこの時間帯、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っている。
そんな中、普段はこの時間にいない紀子が隣にいるのは少しばかり違和感があった。
「『朝一番に登校』だっけ? 帰宅部なのによくやるね〜、私にゃ無理だわ」
「何言ってんの。朝練やってるんだから紀子だって大して変わらないでしょ?」
「やー、やらないと部長がうるさくてさ。先輩たちが卒業してやーっと静かになると思ったら、新しく部長になった奴がやたら張り切っててさ〜。朝練に遅れたら校外5周のペナルティだーっ! って、酷くない?」
「あ、あはは……大変だね」
頬を膨らませる紀子に、咲は笑い返すことしかできなかった。
去年だったか、以前、紀子の部活風景を見た時のことを思い出す。
そういえばあの時も、テニスコートでひと際大きな存在感を放っていた先代部長の怒声が響いていたような気がする。
「そういえば、前の部長も厳しかったって言ってたよね?」
「あー……っていうか、それが原因。今の部長がその先輩の愛弟子みたいな子でさ、その厳しいところもしっかり受け継いでるんだよねー……」
「皆、反対とかはしないの?」
「んー、まぁ慣れちゃったってのもあるけど……あれはあれで、一つのやり方だからねぇ。新入部員なんかは何人か逃げちゃったけど。正直なところ、やる気のない子に居座られても……ってのもあるし」
「ふぅん……なんか、難しいねぇ」
以前、仲良しクラブではないのだから、という話をどこかで聞いた事がある気がする。
そういう人間関係が鬱陶しくて、咲は部活に入らなかったわけだが――。
「まぁでも――」両手を頭の後ろで組んだ紀子は、思い出し笑いをしながら言葉を続けた。
「新部長が先輩に憧れてて、本気で頑張ってきてるのは1年の頃からみーんな知ってるからね。何やかや言って、部員は皆、応援してたりするんだ」
「え、そうなの? だってさっき酷いって――」
「いやほら、『何やかや』言うぐらいは……ね?」
「ぷ、くく……何それ」
言ったところで堪えきれずに吹き出してしまい、二人して笑いあう。
静かな廊下に笑い声が響き、ひとしきり笑った咲は『憧れ』という単語からお姉さんの事を思い出していた。
「けど、なんか良いね……そういうの。紀子もいるの? 憧れの人とか」
「いんにゃー、いないねぇ。凄いなぁって思ったりする事はあっても、なかなかそこまでは。咲はどうなん?」
「私は――」
どうなのだろうか。
今まで、咲にとって『憧れの人』等という存在はいなかった。
一瞬、あのお姉さんの顔が脳裏に浮かぶが、憧れとまで言いきるには――。
「――まだいない、かなぁ」
「あはは、だよねー。……なんかさ、誰にでも目標になる人ができるわけじゃないらしいよ。んで、運良く見つかっても、相応に努力しないと追いつけるわけがない。だから、少しでもそれっぽい人に出会ったら全力でやれって……前にさ、その先輩が言ってたんだ」
「そう、なんだ」
「うん。まぁ、まずは見つけない事には話にならないんだけどねっ」
ちょうど話がまとまったところで、二人は教室に到着した。
扉を開けると数人、登校してきた生徒が居て活発は紀子は「おっはよー!」と飛び込んでいった。
続いて咲も教室に入りながら、紀子の言葉を反芻していた。
(少しでもそれっぽい人に出会ったら……か)
憧れと呼ぶにはまだ早い。そう、『まだ』――。
*****
「……よし」
その日の放課後、校内をぐるりと見て回った咲はポツリと呟いた。
特別教室――美術室や音楽室など――は仕方がないとして、普通の教室や廊下といった箇所に限定すれば、校内はほぼ無人だ。
特に念入りに確認したこの3階に至っては、全く人の気配はなかった。
外からは運動部の掛け声が聞こえてくるが、それもグラウンド側の窓に近づかない限り見つかる事はないだろう。
そしてこの時間帯、教師もそのほとんどは職員室にいる。
(これだけ確認すれば……大丈夫よね)
教室に戻ってきた咲は、ごくりと息を呑んだ。
夕日の差し込む無人の教室を、咲はゆっくり歩いていく。
(どうせやるなら、真ん中――教卓かな)
教卓の前に立ち、二度、三度と周囲を見渡す。
既に何度も確認したのだから当たり前だが、人の声も気配もしない。
ふぅ、と一息ついた咲は、恐る恐る、胸元のリボンに指をかける。
――憧れとかそういうのは良く分からないけれど……お姉さんの事が気になっているのは、確かだ。
するりとほどいたリボンを教卓に置く。これからを想像する咲の身体は、静かに打ち震えていた。
第8話ここまで
第一話
未来視できる少女が見た、自分の露出行為
第二話
教室で全裸露出プレイを楽しむ未来の咲
第三話
コートの下は全裸な露出狂のお姉さん
第四話
美人なお姉さんが露出する理由
第五話
露出狂への階段を登る少女
第六話
ついに下着を脱いでノーパンになる女子中学生
第七話
トイレで全裸露出する未来の自分からの露出のお誘い
第八話
露出狂なお姉さんへのほのかな憧れを胸に、教室で脱ぎ出す少女
第九話
校内で全裸露出する咲ちゃん14歳
第十話
超絶ピンチ!!露出プレイを楽しんでいたら、人が来たよ!
第十一話
女子中学生が教室でオナニー、そのまま絶頂へ!
第十二話
下半身を露出したままで教室で教師とご対面
第十三話
数年後、コートを羽織った露出狂の女がそこに
最終話