第9話
一枚、また一枚と服を脱いでいくたび、身体にゾクゾクと『何か』が駆け巡る。
まるで、空腹に耐えに耐え抜いた後に豪勢なディナーでも出された気分だ。
脱いだ衣類は教卓の上にきちっとたたんで整える。
――どうせなら、いっそ……。
上履きを脱ぎ、床に素足をつけた。
堅く、ひんやりとした感触を足の裏に感じながら、咲は一糸纏わぬ姿で廊下へと歩を進める。
耳を澄ませばペタペタという足音が聞こえてきそうで、緊張感が二割ほど増す。
ゆっくり廊下に顔を出して、誰も来ていないことを確認した。
(ここから、どうしよう……)
あの時見た未来は、『教室で脱いで廊下に出るところ』まで。
そこからどうなるのかは、自身を以って体験するしかない。
もちろん咲も、この行為をするにあたって何も考えていなかったわけではなく、いくつかの案はあった。
――この階の廊下の端まで行って戻ってくる、とか。
――別の階に行ってみる、とか。
――最悪の場合は、何もせずに戻るとか。
もしかしたら昇降口まで行けちゃったりして、等と根拠のない想像もしていた。
けれど、いざ衣類を脱ぎ去ってみるとその心許なさは半端ではない。
誰かに見つかったりしたら――そう思うだけで心臓の鼓動が耳元でかち鳴らすような勢いで響き、一気に上がった体温が頭をボーッとさせる。
始める前に色々とトラブルを想定してはその対策を練っていたのに、それらが全部吹き飛んでしまった。
それでも。
ここまでやった以上は、少しは何かしておきたい。
(せめて、そこの階段まで行こ)
教室のすぐ隣の階段に視線を移す。
行って帰ってくるだけなら、走れば5秒にも満たない距離。
そのぐらいやれなければ、『あのお姉さんみたい』にはなれやしない。
「……っ」
えいっ、と勢いづけて廊下に飛び出した。
そのまま階段に向かって駆け出し、折り返して教室へ――という咲の描いていたスマートな行動イメージは、しかし現実のものとはならない。
踏み込んだ足は震えて力が入らず、転ばないようにと一歩ずつ進むことしかできなかった。
(やば、これ……!?)
ゆうに10m以上先まで見通しの利く廊下。
コの字型の校舎のため、窓からは向かいの教室がよく見える。
そんな開放的な空間のせいか、あれだけ確認したにも関わらず、どこからか見られているのではないかと異常に周囲が気になってしまう。
――廊下の柱の陰に誰かいるんじゃないか。
――向かいの校舎からこっちを見ている人がいるんじゃないか。
――階段を上ってくる(下りてくる)人がいるんじゃないか。
さっき見て回った時には、どこも無人だった場所。
それでも状況が変わっているかもしれないと、2・3歩進んでは振り返り、全身の感覚器官を総動員して安全を確認する。
見つかった時点で全てが終わると考えると、一瞬たりとも気が抜けなかった。
(あのお姉さん、こんなことを屋外でしてたの?)
これだけ閉ざされた屋内であっても、ほんの数mを歩いただけで咲は恐ろしく気力・体力を消耗している。
それを思うと、川辺でのあの行為はどれだけの緊張感に見舞われるのだろうか。
息を切らせ、足をガクガクと震わせながらもどうにか階段に到着した咲は、素早く上下を見渡した。
しんと静まり返り、夕日が差し込むだけの光景に「よかった、誰もいない」と胸を撫で下ろす。
そして、思う。これからどうしようか――?
(すぐ戻るつもりだった……けど)
あれだけ準備し警戒して歩いてきたおかげか、予想以上に簡単に階段まで来れてしまった。
もう少しだけ進んでみても――咲の中にそんな感情がふと芽生える。
(でも何かあったら戻るのに時間がかかるし……けど、このまま戻るのも勿体ない気が……)
いや、けれど、でも――と。
何か考えるたびに否定要素が顔を出し、咲の足は完全に停止した。
階段に到着して、はや何十秒過ぎたか。
脳内では必死に最善策を模索する咲だが、それは無意識に『その場に留まる』という行為を選択していることになる。
それは露出という行為において、良くない部類に入るのだが――。
パタ、パタ、パタ――。
階下からの階段を上ってくる足音に気付いたとき、咲は「早く戻っておくべきだった」と酷く後悔した。
第9話ここまで
第一話
未来視できる少女が見た、自分の露出行為
第二話
教室で全裸露出プレイを楽しむ未来の咲
第三話
コートの下は全裸な露出狂のお姉さん
第四話
美人なお姉さんが露出する理由
第五話
露出狂への階段を登る少女
第六話
ついに下着を脱いでノーパンになる女子中学生
第七話
トイレで全裸露出する未来の自分からの露出のお誘い
第八話
露出狂なお姉さんへのほのかな憧れを胸に、教室で脱ぎ出す少女
第九話
校内で全裸露出する咲ちゃん14歳
第十話
超絶ピンチ!!露出プレイを楽しんでいたら、人が来たよ!
第十一話
女子中学生が教室でオナニー、そのまま絶頂へ!
第十二話
下半身を露出したままで教室で教師とご対面
第十三話
数年後、コートを羽織った露出狂の女がそこに
最終話