第3話
あれから二週間が経ち、新学年の生活にも慣れてきた。
相変わらず視界の端には未来の自分が紛れる事があり、その中には”そういう行為”の未来も二度ほどあった。
学校のトイレで全裸になっている姿、家の前で服を脱ぐ姿――思い出すだけで顔が赤くなる。
さっさと忘れてしまいたいが、あまりに強烈すぎて――何より自分がやる事になるかもしれないと思うと――頭から離れてくれない。
処刑されるまでのカウントダウンのようで、日ごとに気が滅入ってしまう。
(あー……もう、何なの!)
夕日の差す川沿いの土手を歩いていると、吹きつける風に髪が乱されて鬱陶しい事この上ない。
あんなものを何度も思い出してしまって苛立ちのピークにあった咲は、八つ当たりのように足元の小石を蹴っ飛ばした。
小石は着地した場所が悪かったのか大きく方向をそれて、茂みの中へと突っ込んでいく。
本来の通学路では遠回りになるこの道は、車や自転車では通れない道を経由するため人がほとんど来ない。
それでいて春先には綺麗な桜を咲かす木々が道沿いに立ち並ぶため、知る人ぞ知る穴場スポットだ。
そして、もうすぐ5月になろうという時分では鮮やかな桜吹雪ももう見れず、立ち寄る人はごく稀だ。
しんと静まり返るこの場所は咲のお気に入りで、気晴らしには良いかと下校時に立ち寄ってはみたものの――。
やはり、あの妙な未来の事を忘れないことには苛立ちは解消しそうもなかった。
「はぁーーーーーー……」
深く深く、ため息をこぼした。
今までの経験上、咲が見た未来は一ヶ月以内には実現する。
つまりあと二週間ほどで――下手をすれば明日にも――、咲はあの予知通りに”あんなこと”をするはずだ。
そこにいったい、どんな理由があるのか――。
「ん……?」
ガサ――と、木々の間から茂みを揺らす音が聞こえて咲は立ち止まった。
気のせいだろうか。確かに音は聞こえたのだが、音の主の姿は見えない。
それなりに大きい木が多く、物陰はいくらでもあるのだからどこかに隠れているのかもしれないが――。
(――ま、いっか)
先ほど蹴飛ばした石に驚いた猫か雀あたりだろうと断じて咲は歩みを再開しようとしたが、そこを狙いすましたかのように、今日一番の強風が駆け抜けた。
「わわっ!?」
あまりの強風に一瞬身体がよろけ、まくれるスカートに気を使う余裕すらない。
たたらを踏んでどうにか転ばずに済んだと思ったところで――。
「きゃあ!! 何、何なの!?」
その瞬間、布のような物が咲の頭の上から被さり、視界が閉ざされた。
*****
「はい、これ。さっきのお礼よ」
「えと……ありがとうございます」
差し出された缶コーヒーをおずおずと受け取り、咲は伏し目がちにお礼を言った。
うん、とにこやかに頷いたお姉さんは「じゃ、私も」と隣に腰掛け、公園のトイレから回収してきたボストンバッグを脇に置く。
そしてカシュ、と同じ銘柄のコーヒーを開けて一口すすった。
20代前半くらいの、黒い長髪が印象的な女性。
スタイルが良いのかコートの着こなしも完璧で、綺麗というよりカッコイイとさえ思える。
そよそよと柔らかな風がお姉さんの髪をなびかせ、その様をぼんやり見ていた咲はふと、ボッと顔を赤らめた。
「……っ!」
あの光景が頭に浮かぶと、ベンチに隣り合って座っているお姉さんのコートの下にどうしても意識が向かってしまう。
何となく悟られまいと顔を伏せ、貰ったコーヒーを一口、二口飲んで身体を冷まそうと試みる。
「ん、あまりコーヒー飲まないですけど、これ甘くて美味しい……」
「ふふ、カフェオレだからね。 私も勧められて飲んだんだけど、それ以来お気に入りなんだ」
「そう……なんですか」
屈託なく笑うお姉さんの横顔を見て、川原での赤面顔とは随分違うな、と思った。
あの時、咲に覆い被さってきたのは一枚のスプリングコートだった。
何とか頭から引き剥がして首をかしげていた咲に、茂みから声をかけたのが隣に座るお姉さんだ。
器用に幹の太い木の裏に身を隠し、「そこのキミ。悪いけどそのコート、持ってきてくれる?」と手招きされた。
取りに来ればいいのに、いったい何だろうと何も考えずに近づいた咲の前には――恥ずかしそうに胸と股間を手で隠した、全裸の女性が身を捩じらせていた。
――そう、つまり、お姉さんのコートの下は生まれたままの姿なのだ。
「いやぁ。キミがあそこにいなかったら、コートが川に流されてたかもと思うとゾッとするね」
と、お姉さんは笑うが――正直ゾッとするどころでは済まないだろう、と咲は苦笑した。
そもそも股下10cm程度しかないコートで足を組んでいることでさえ、うっかり”見えて”しまいそうで落ち着かない。
脇にあるボストンバッグには着替えが入っているらしいが、これはついさっきまで公園のトイレに隠していたもの。
川からここまでの間に人通りがあることを考えたら、コートなしではまず戻って来れないだろう。
危険極まりない行為に他ならず、何を思って外で服を脱いだりしたのか――瞬間、”未来の私”の姿が頭をよぎる。
「――あの……なんであんなこと、してたんですか?」
少なからず自分の将来に関わることのような気がして、咲はそう訊かずにはいられなかった。
第三話ここまで
第一話
未来視できる少女が見た、自分の露出行為
第二話
教室で全裸露出プレイを楽しむ未来の咲
第三話
コートの下は全裸な露出狂のお姉さん
第四話
美人なお姉さんが露出する理由
第五話
露出狂への階段を登る少女
第六話
ついに下着を脱いでノーパンになる女子中学生
第七話
トイレで全裸露出する未来の自分からの露出のお誘い
第八話
露出狂なお姉さんへのほのかな憧れを胸に、教室で脱ぎ出す少女
第九話
校内で全裸露出する咲ちゃん14歳
第十話
超絶ピンチ!!露出プレイを楽しんでいたら、人が来たよ!
第十一話
女子中学生が教室でオナニー、そのまま絶頂へ!
第十二話
下半身を露出したままで教室で教師とご対面
第十三話
数年後、コートを羽織った露出狂の女がそこに
最終話