第三話
そうして迎えたクリスマスイブ。
西島ヒナノがやって来るのは午後10時。
さすがにイブの夜に残業を強いられることもなく、俺は定時に退社して帰宅していた。
俺が住んでいるのはオートロックの無い安物マンションの六階。
帰宅時に外から眺めた限りでは、イブの夜とあってほとんどの部屋の住人が出払ってしまっているようだった。
夕食は簡単に済ませてしまう。
そして来客に際して恥ずかしくない程度に部屋を片付ける。
下手に触ったら倒れたり、壊れたりし易い物は別の場所に移しておく。
西島ヒナノのような若い女の子が話題を取り出しやすいと思われる物を部屋に配置しておく。
流行の物とか、可愛い物だとか、そういうものをさり気なく。
初対面の相手にわざとらしいアロマなどは警戒心を持たれるので絶対に使わない。
新鮮な空気を入れ換えるために窓を開けて、そのついでに床を丁寧にほうきで掃く。掃除機も持っているが、展開がどう転ぶかわからない時は、周囲に「何かしている」と気取られることは避けるに越したことはない、とは馬場健一郎の教えだ。
床掃除を終えて窓を閉めると、消臭スプレーを散布。
あとは加湿器を使って空気を潤しておけばいい。
催眠薬と共に引っ張り出してきた大人の玩具や拘束具を改めて点検する。
プレイの最中にバイブレーターの電池が切れたことが判明した時の、あのどうしようもないみっともなさは、たとえレイプ犯相手でも憐れまれてしまうことだろう。
だからチェックに念を入れるに越したことはないのだ。
五年間、段ボールケースの中で眠り続けていた玩具と拘束具の中には、電池を交換しても動かないバイブレーターや、ベルト部分に亀裂が入ってしまっている拘束具などもあった。
なので俺は、こちらは五年以上もご無沙汰だったアダルトショップに出向き、新しく買い揃えてきた。
半分使い掛けのローションなどは、まだ使えなくもなさそうだったが新しいものにすることにした。通常のタイプと、温感タイプの二種類。ひんやりとした通常タイプのローションは相手の恐怖感を煽るのにも役立つ。
また温感タイプはクリトリスに塗っておけば地味に媚薬的な効果を発揮してくれるものらしい。
プラシーボ効果かもしれないけれどもね。
俺はそう思って使っているし、使う際にはそういう具合に囁くし。
せっかくなのでアダルトショップの店内を散策する。
自分がプレイする側なのでビデオコーナーには見向きもせず、グッズコーナーの品揃えを確かめていく。
五年以上のブランクがあったとしても、アダルトグッズの顔ぶれは変わらない。
少し変わったかと言えば、グッズパッケージに可愛い女の子のイラストが描かれた物が増えたように思われる。
オナホールのパッケージは半分以上がそれだった。
俺の親友である馬場健一郎はオナホールを愛好している者の一人だった。
親友とは言え、奴の生い立ちなどについてはあまり知らない。
レイプなどのような、女を泣かせ、いたぶるプレイが大好物だったが、相手がいない時にはポリ塩化ビニル性の疑似女性器・オナホールで自慰に耽っていた。
大雑把に大別すれば、オナホールには二種類あって、一つは貫通型。
貫通型とは男性器を突っ込めば、性器の先端が外に露出するタイプ。
もう一つは非貫通型で、男性器を突っ込んでも、その全てを包み込んでくれる袋状になっているものだ。
馬場健一郎が好んで使っていたのは非貫通型。
こちらの方が女性の膣内に近しいことと、底付きした時に亀頭を刺激してくれるのがいいらしい。
その辺は個人の嗜好なので口出すつもりはないが、馬場健一郎はオナホール内に射精した後、あの射精後の気怠さもあってか、なかなかオナホールを洗浄しないで、放置しておくことが度々あった。
塗りたくったローションと、吐き出した精液に青カビが発生し、強烈な腐敗臭を放ち始めるのに、そう時間は掛からない。
俺が段ボールケースの中のディルドゥなどを点検し、物によってはタワシで擦り、無水アルコールで消毒したりする綺麗好きだとすれば、馬場健一郎はその真逆で、女の肌を模したピンク色のオナホールが青カビに染まっていようとも気にしないで部屋に置いていられる奴だった。
匂いなんかも慣れてしまえば気にならないらしい。
さすがに汚れたオナホールを再使用するほどの汚男ではなかったが、オナニーする度にオナホールを使い、使っては部屋に放置して腐らせていく。
食い散らかした汚らしい部屋に、ゴロゴロといくつも転がる汚オナホールを初めて見た時、俺はさすがに吐いた。
馬場健一郎は自室で嘔吐されようとも、さほど慌てたりせず、雑巾一枚で簡単に拭っただけだった。
そんな馬場健一郎が死んで五年になる。
五年も経った今、奴からなにかプレゼントが届くという。
それもクリスマスイブに。
あの汚男から一体何が届くというのだろうか?
西島ヒナノが属するドリームプレゼンターに依頼をしたのは死亡する数日前。
まさか自分の死期を悟って、形見として何かを送りつけてくるつもりだったのだろうか?
それとも五年も間隔が必要だったのは、なにか重要な暴露データを隠匿するためで、隠れ蓑としてドリームプレゼンターを利用した可能性。
少しサスペンスドラマの観すぎかもしれない。
ほぼ無職と言ってもいい状態だった馬場健一郎が、手の込んだ隠匿工作を必要とする情報など持っているわけがない。
「久しぶり、五年ぶりだな。
どうせお前は独り身で寂しいクリスマスなんだろ?
俺のお宝動画をプレゼントするぜ」
とDVDディスクが山ほど贈られてくる可能性の方が遙かに高いだろう。
結局の所、馬場健一郎のプレゼントの内容については俺は興味が無い。
クリスマスイブに贈ってくるなど、悪ふざけに過ぎていると腹立たしい気さえする。
だが、大人の玩具や拘束具を手入れ・点検し、必要なものは新調。
部屋を片付け、話題をいくつも準備している今の俺はなんだ?
馬場健一郎の名前を聞いて、真っ先に思い出されるのは、馬場健一郎と共謀し、レイプを繰り返した日々のことだった。
そして五年ぶりに馬場健一郎の名前を語ったのが西島ヒナノという『女』という事実。
俺の思考は単純に一直線に西島ヒナノをレイプすることを考えていた。
西島ヒナノが配達に訪れる約束の時間は午後10時。
もうすぐだ。
部屋を掃除し、片付け、玩具を用意しているなんて、まるでデリヘル嬢がやって来るのを待っているかのようだったが、俺が連想するのはそうではない。
馬場健一郎と女性の誘拐、強姦行為を繰り返していた頃、女性を拉致する適当な場所を決めたら、そこを通るであろう手前の小道に車を停め、好みの女性が来るのをじっと待つのだ。
運転席には俺。
後部座席には馬場健一郎。
暗がりから女が現れるのを今か今かと待ち焦がれていたあの頃を思い出す。
「西島ヒナノっていう良い女がいるんだ。
今日はその子を捕まえよう」
後部座席から馬場健一郎がそう囁いているように思えてならない。
まだだろうか、もうすぐ、もうすぐ約束の時間だ。
――玄関チャイムが鳴ったのは、寸分違わず午後10時丁度の事だった。
第三話ここまで
第一話
可愛い少女の配達員
第二話
少女を睡眠薬で眠らせてレイプへ
第三話
ディルドゥやバイブ、ローターを点検しつつ、少女を待つ
第四話
可愛い女の子だからいじめたくなる
第五話
少女を密室に誘い込んでレイプへ
第六話
少女の弱みに付け込んで
第七話
恐喝して少女の唇を奪う
第八話
電話させながらアナルに指を挿入
第九話
アナルに指入れ。そして睡眠薬を
第十話
微睡む少女へクンニリングス
第十一話
少女のアナルを巨大ディルドゥに叩き込む
第十二話
アナルとクンニで同時責めで少女は絶頂に
第十三話
子宮を突き上げ、少女をイカせ続ける
第十四話
まるで3P。二穴プレイで少女に中出し、絶頂へ
最終話