第十九話 ネットアイドルの懐妊報告(?)
「はーい、みんな、こんばんはー。
MEIです。
今日もよろしくねー!」
……芽衣が『MEI』と名乗ってWEBカメラに向かって挨拶している。
いつもよりもちょっと声のトーンが高い。
「黄色い声」とまではいかないかもしれないが、うっすら黄色い。
なんでそんな媚び調子の声をWEB配信しているんだろうな~と思わなくもない。
芽衣に露出行為の楽しさを知って欲しいと思ってアレコレ奔放した結果、芽衣はネットアイドルの方へと進んで行ってしまった。
顔を隠せるように市販のマスクをして、要望が多いので制服姿になって。
深夜午前1時からの生配信で、適当な雑談をしばらく行った後は、俺とのセックスシーンをネット上に放流する。
芽衣の高校生然とした肢体は、その手の嗜好の紳士を大量に集めに集め、今や視聴者数は10万を優に超える。
確か俺のために剃毛パイパンにしたはずだった芽衣の股間は、生視聴者だけでなく再配信、それに動画サイトに無断アップロードされたり、共有ソフトでばらまかれたり、シーンの断片をGIFアニメ化されていたり、画像単体で海外サーバー経由でアップされていたりだ。
……あまり快くは思っていないけれど、たまに芽衣を抱きながら誇らしく感じる時もあるのでなんとも言えない。
独占欲と、ネット上で小人気の芽衣を犯す征服欲のせめぎ合い。
芽衣は『MEI』になりきって、俺に背を向けたままで視聴者に語り掛けている。
視聴者の要望コメントに流されて『MEI』は淫らなポーズを取ったり、制服を脱いだりしてみせるのだ。
いっけん恥ずかしがっているようにしながらも、『MEI』自身にその気があるような節。
『MEI』の痴態を見たいと願う視聴者と、視聴者に痴態を見られたいと密かに思っている『MEI』がモニター越しに猥談を繰り広げている。
「なぁ、MEI」
俺はMEIの隣に顔を出す。
当然WEBカメラに捉えられてしまっているだろう。
画面に「登場はやっ!」とか「お呼びじゃない」とか失礼なコメントが飛び交う。
……うぜぇ(´д`)
俺はそのままMEIを後ろから抱き締めた。
わざとWEBカメラに映り込むようにMEIの胸を揉みながら、片方の手は遠慮無くスカートの中に差し込む。
なんか罵倒コメントが一気に流れてきたけれど、無視する。
片手では胸を、もう片方の手では女性器を覆うように手を乗せ、そのままギュッと後ろ抱きする。
別に前戯を始めたいつもりではないんだ。
そのことはMEIこと芽衣にも伝わったらしく、少し神妙な面持ちになってWEBカメラの向こうの視聴者に語り掛ける。
「実は……今日はみなさんにお知らせしなくてはならないことがあります」
なにかしらの気配を感じたのか、画面に流れるコメントは「まさか引退宣言っ!?」などと狼狽が表れている。
引退を惜しまれるほどに愛されているMEIなのだと思うと、少し胸が痛んだけれども、それでもやはり芽衣の身体を不特定多数の人間に観られるままの状況にはしておけないのだ。
なにせ――
「この前、産婦人科に行ってきました」
「ご懐妊キターーーっ!!」みたいなノリのコメントが一気に画面に溢れた。「寿退社!ならぬ寿引退!」などなど。
芽衣が産婦人科に行ったのをさっき知らされたばかりの俺だって動揺している。
「……えと……その……生理が来なかったから……ね」
産婦人科での診察の結果はまだ知らされていないけれど、たぶん……こうして大勢の視聴者の前で発表したがった芽衣のことだから、きっと……そういうことなのだろうと思う。
思えば長かったような――
小学生の頃からの交際で、学生時代はずっと抱かせて頂いた。
性欲狂いの時期、その全てを注がせて頂いたのだから芽衣を嫁にすることに何の不満もない。
まぁ強いて言えば芽衣の両親に報告する際に、できちゃった結婚としてではなく報告したかったという男の見栄みたいなのはあるっちゃある。
どうでもいい見栄である。
「MEI、それで結果を知らせて欲しいんだけど」
「……あ、うん、わかってる。
えと、視聴者の皆さん、診察の結果なんだけど、まだ彼にも知らせていないんだ。
ここで初めて発表させてもらうね」
「ありがとうMEIちゃん!」
「その気遣いが嬉しいよ!」
「出産頑張って!」
とかとか、すでに大盛り上がりになっている。
云十万の視聴者が祝福のコメントを一斉に流してくれて、画面が大変なことになっている。
あまり俺への祝福のコメントが見当たらない。
たまに見つかるのは罵倒文句のようだが……?
まぁいいさ。
芽衣のご懐妊の発表、いよいよ俺も父親になるのだという不安と期待と自負。
促すように愛おしい芽衣の名前を、芽衣の耳元で囁く。
MEIが俺を見遣って甘く微笑みを返してくる。
そうしてから再び視線をWEBカメラに向けた芽衣は、口を開いた。
「こうして深夜の生配信を続けて、早三ヶ月が過ぎました。
毎日の配信、楽しく思っています。
多くの視聴者様にも恵まれ、その視聴者様の前でエッチなことをすると、とても興奮します。
彼と二人きりでエッチをするのも気持ち良いんですよ?
でも大勢の人に見られているんだと思うと、もっともっと気持ち良くなることができて……視聴者の皆さんも一緒に気持ち良くなってくれていましたよね?」
ここでまたドバーッと賛同コメントが流れてくる。
これだけ多くの野郎共が俺と芽衣のセックスを観ながら一緒にオナってたのかと思うと、なかなか衝撃的だった。
「ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
……それなのに、今日は皆様に残念なお知らせをしなくてはならなくて心苦しい思いです」
いやいやいや! 子供ができたお知らせを「残念なお知らせ」って言っちゃうのはダメでしょう?
あまつさえその子供って俺の子供なんだし!
画面に踊るコメントも俺の気持ちを汲んだかのようなものが多かった。
なにも俺たちのことを気にしなくていいんだよ、おめでたい報告なんだよ、そんなお気遣いコメント。
芽衣をオカズにオナった野郎共に、穴兄弟ではないけれども、なにかしら近しい思いを抱きながら、そのコメントにうるっときた。
「泣くんじゃないよ」
と俺宛のコメントが一つ。
まるで降り始めた小雨のように同様のコメントが続き、溢れた。
余計に目尻が濡れるじゃねぇかよ、兄弟。
「産婦人科での診察の結果ですが……」
目尻の涙を拭う俺の姿に気を遣ってか、芽衣が話題を進めてくれた。
いよいよご報告のようだった。
「……ただの……」
ただの?
「……ただの生理不順でした」
……?
「え?」
「昼夜逆転の生活とまではいかないものの、こうして深夜配信を続けてきたおかげで生活リズムが狂い、生理周期もおかしくなってきたみたいなんです。
なので皆様、本当に心苦しいですが、しばらくの間、休暇を頂きたいと思います。
休暇前、最後の配信になるので今日はいっぱい頑張ってエッチしたいと思いますので、ちゃんと朝まで視聴してくださいね!」
いやいやいや……
第十九話 ネットアイドルの懐妊報告(?) ここまで
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