第五話
僕と後輩少女は性器を繋げたままで、二人してぽか~んとした顔になっていた。
「パッシングされた?」
「はい……そんな覚えがあります」
「五回?」
「う~ん、たぶん……」
軽トラックのパッシング五回で女の子の心を惑わすことができるんだと馬鹿な話を聞かせたものだから、後輩少女がそれに乗っかって嘘を吐いている可能性は十分にあった。
しかし仮に嘘だろうと真だろうと、後輩少女がレイプされたのは十年近く前の話になるのだ。
どう考えたって僕とレイプ事件を関連づけるのは無理があった。
そうやって論理立てて思案する僕をじっと見つめる後輩少女の視線に気付く。
僕たちは性交したままで、射精を終えたものの勃起し続ける男性器は深々と後輩少女の中にある。
膣肉がきゅっ、きゅっ、と吸い付き、締め付けてきているのが感じられる。
精液をもっと寄越せと蠢く膣道ではあったのだけれど、そこに後輩少女の不安げな視線が加わると、僕は卒業式での後輩少女の告白を思い出す。
僕への想いを伝えた後、僕の返答に期待しつつ、不安げだった後輩少女の様子がまざまざと蘇り、目の前の後輩少女の様子と重なるのだ。
後輩少女の膣がキューッと締まる。
僕は喉まで出かかっていた言葉を飲み込んだ。
そして改めて別の言葉を発した。
「お前をレイプしたの、僕だな」
「え、あれって先輩だったんですか? 時系列が滅茶苦茶ですけど」
「可能性はある」
「あるんだっ!?
いやだって、あの時私の中に出されてた精液の量って先輩一人で出せる量じゃなかったですよ?」
「浴衣少女はとっても可愛かったから、いっぱい出したから」
「…………………」
「…………………」
後輩少女が宝石のような瞳で僕を見つめてくる。
涙をいっぱいに溜めて、今にも嗚咽を漏らして泣き出しそうな顔だった。
どう慰めてやったもんだろうか。
僕は再び言ってやるのだ。
「お前をレイプしたの、僕だ」
あまりに荒唐無稽な話に後輩少女が笑い出す。
僕も釣られて笑い合って、それからキスをして二回戦、三回戦と繰り返し中出ししてやったら、その量を見て後輩少女も納得したようだ。
「なぁんだ、私をレイプしたのって先輩だったんだ」
長年の謎があっさり解決してしまったように後輩少女は言う。
服装を整え、僕の軽トラックに手を触れる。
「そっかそっか、軽トラックも三十年現役で走り続けたら、不思議な力に目覚めちゃうんだろうな。
ありがとうね、軽トラちゃん。
私も私の軽トラック大事に乗り続けようっと。
じゃあね先輩、またね!」
後輩少女は軽トラに乗り込み、川沿いの道を帰っていく。
少し走った所で、予想通りブレーキランプが五回点滅した。
「ア・イ・シ・テ・ル」のサインのつもりなのかもしれなかった。
とりあえず微笑んで後輩少女を見送る僕の隣で、軽トラックが返事をするように勝手にパッシング五回を送るのだった。
「……そんなこともあるよな」
うん、あんまり難しく考えない方が幸せかもしれないな、と僕は思うに留めることにした。
今の今まで性交を続けていた後輩少女が去って行くのを見送る心寂しさに、卒業式の寂しさを思い出す。
後輩少女編 終わり