―― 施設内部で付ける物 ――
コンコンっとドアがノックされる。
「入るわよー」
茜さんが部屋に戻ってきたようだ。
「ただいまー。・・・あら? 萌子ちゃん、顔が少し火照っているみたいだけど、何かあったのかしら?」
「あ、いえいえっ! な、なんでもないです。あはっ、あははっ・・・」
「・・・? そう、ならいいけど。それでね、早速だけどーーー、萌子ちゃんには最初に、これをつけてもらうわ」
茜さんは丸い輪っかをどこから取り出し、テーブルの上にことりっと置く。
私はそれを眺める。・・・こ、これは・・・っ!
「えーと、これ、首輪ですよね?」
「そうよー」
「えーと、えーっと、これを・・・私のどこに・・・つけるんですか・・・?」
おそるおそる聞いてみる。
「そりゃあ、当然首に」
当たり前の答えが、返ってくる。
「これはね、施設で実験を受けています、という証ね」
えええええ、は、はずかしいぃよぉ~。
「あらぁ、以外とシャイなのねぇ」
私が頬を赤らめて両手で押さえるのを見ると、茜さんはくすくすと笑う。むっ、バカにされてるかも。
「だって、だってっ、首輪ですよ! ペットですよ! わんわんおですよ!?」
「そう言うものじゃないわよ。体温測定とか、神経管理とか、データの伝達を担った器具なだけよ」
ほ、ほんとかなぁ~。
「でもさっき、エッチなことされても構わないって、はっきり同意したわよね?」
うぐっ
「それとも、首輪はイヤという理由だけで帰っちゃうのかしら?」
うぐぐっ。
「首輪だけではずかしがっちゃう、乙女の萌子ちゃーん」
うぎゅぅ~っ。
「もー! 付ければいいんでしょ! 付ければぁ」
私はあきらめて、首輪を付けることを同意してしまう。
「そうそう、いい子ね~」
そういうと、笑顔の茜さんは私の後ろに回り込む。
・・・はっ! もしかして、私、茜さんにのせられた!?
気が付いたときには時すでに遅し。茜さんはもう取り付けてる準備をしている。
「ほーら、手伝ってあげるから、ね」
そういうと、茜さんは首輪を左右にぱかっと分解する。
あっ、あっ、あっ。
わた私としたことがななな何という失態。どど、どうすればいい、どうしようぅぅぅ!?
「うりゃ」
「あ、だめっ、だめですっ! まだ心の準備が・・・あーーーっっ!!」
茜さんが容赦なく私の首に、首輪を取り付ける。
がちっ。
いい響きと共に、首輪はがっちりと、私の首にはまってしまった。
それはもう、その首輪は私の首の大きさにぴったりで、全然外れる様子がない。
・・・あ、あああああああっ。
わ、私、ペットになっちゃったんだ・・・。
私、ペットになっちゃったんだ・・・・・・。
私、ペットになっちゃったんだ・・・・・・・・・。
心の中でエコーが続く。別に私はペットにはなっていないはずなのだが・・・。
がらんごろんどしん。私の精神の何かが崩れていく。
首輪・・・わたし・・・首輪・・・。
わんわんお。わんわんおー。
茜さんの話が聞こえていない。首輪を付けたことによる背徳感が・・・それはもう、すごくて。
そして、不思議ともう一つの感情が芽生える。
これから、色々と激しくエッチされちゃうんだ。
私の意志に関係なく犯されちゃうんだ。だってペットだもん。
「萌子ちゃん、萌子ちゃーん」
はっ。私ったらつい、いけない想像を!
「は、はひぃ」
痛い。舌噛んだ。
「別に首輪だけじゃないのよ? 次は、これね」
茜さんは次に、腕輪・・・だろうか? 少し厚いピンク色の腕輪を半分に割ったような物を2つ、ポケットから取り出した。
おそらく、先の首輪同様、2つを合わせることで、本来の腕輪の形を再現できるのだろう。
「これを付けるから、右腕を前に出してね」
とりあえず、私は右腕をそのまま前に出す。
「あ、静脈が見えるように、肘から手首を手前を裏返しにしてね」
・・・? 手のひらをぐるっと半回転させて、裏返しにする。
私の腕は少々細いため、手首の方にはうっすら青色のような線が浮き出ている。もうちょっと筋肉つけないとまずいかもしれない・・・。
茜さんは、私の肘の近くをじーっと見つめて、
「この辺かしらね」
カチリッ
先ほど持っていた腕輪のパーツを、私の肘の近くに取り付ける。2つのパーツは合体して、私の腕に腕輪が装着される。こちらも驚くほどにピッタリだ。
普通の腕輪なら、手首の方に移動すれば外れるものだが、この腕輪は全く動かない。完全に腕に密着しているように感じられる。
「んと・・・これは何に使うんです?」
「投薬用。投薬が必要になったら自動で針がぷすっと出てきて、安全にお注射することができるのよー」
「ええええぇぇぇっっ!? 注射いやぁぁぁっ!!」
「おーちーつーき、なさい。ここから出てくる注射針は特殊な形状で、そんなに痛くならないようにしてあるから。それに必要な機会があれば投薬を行うけれど、通常では特に使用しないからね」
「ほ、本当に?」
「本当よ」
茜さんがしょーがないなぁといった態度で私を見てくる。そんな茜さんの態度を眺めると、何で私、慌てていたんだろう? と、冷静さを取り戻す。あ、でもでも、やっぱりお注射は嫌いだよ~・・・。
「さー次の機姦も付けちゃいましょー」
「機姦? ・・・ですか」
「そ、機姦。機械にエッチなことをさせる器具や道具のことを、うちでは「機姦」って呼んでるのよ。・・・機姦といっても様々でね、まぁ、機械が何らかの理由でエッチに関連していた場合、そう呼ぶことにしてるわ」
・・・どきっ!
その説明を聞いて、私の心が熱くなる。
首輪に投薬・・・。な、なんてコンボだ・・・。
官能小説で一度しか呼んだことないぞ。そんなジャンル。
ま、まさかそれを私が受ける日が来ようとは。
なんかもう、色々とすごい。お股が濡れているかもしれない。エッチな子にされちゃうっという現実味が格段に増す。
な、なんだか期待してないか私!? 違う! 女の子は誰しも、白馬の王子様がでてきて結婚することを期待してるんだ。あ、でもエッチはエッチで好きだよ。あ、でもでも・・・。
考えがまとまらない。あわわわわ。
「はーい、考え中のところ悪いけど、最後にこれを付けてもらうわよ」
「は、はいぃ!」
声をかけられて考えごとをやめる。そして、茜さんが取り出した物を眺める。これは・・・カチューシャだ。
まさかこれも、とんでもない機能が付いているのでは!?
「これは、萌子ちゃんの脳波をいつでも測定できる優れ物。調教用具ではないわよ」
・・・なーんだ。
少しほっとする。前2つの器具と違ってこいつはまともそうだ。
もさっ。
茜さんが私の髪にカチューシャを取り付ける。
「萌子ちゃん。これらの器具は、原則1日中付けることになっているから、無理して取り外さないでね」
「は、はい・・・」
首輪に薬にカチューシャ、1日で変な装備が3つも増えてしまった。全部ぴったりサイズで、違和感は特に感じない。
「あーそれと、これが今の萌子ちゃんよー」
ほい、っと小さな手鏡をわたされる。
私はちらりと鏡の中をのぞき込む。
・・・おおっ、首輪とカチューシャがかわいい?! いやいや、首輪はなにかと背徳感がするな・・・。
カチューシャは素直にいいと思う。腕輪は注射さえなければ特に何も感じない。
「よし! 今日はこれで全部終わり! お疲れさま~」
あ、これで終わりなのね。
「後はゆっくり寝るだけよ。夜10時には消灯するようにね。それと、寝る前になったらそこのメモ用紙を呼んでおくように」
茜さんが指を示す先には、メモ用紙と瓶が一つおいてある。なんだあれ?
「それじゃ、また明日~」
そういうと、茜さんは部屋から出ていってしまった。
・・・。
とりあえず、私はベッドに軽くダイビングする。ぼよーん。
—
「・・・はっ」
それからというものの、お布団が気持ちよくて、ごろごろしてたら、眠気が襲ってきていた。
あぶないあぶない。寝る前にメモをみておくんだったよな。
私はがばっと起き上がり、机まで移動する。メモが置いてあるので、それをのぞき込むように見てみる。
「今日の夜、瓶の中の液体を、必ず全部飲むように!」 とメモ書きがされてる。
そしてメモの隣には、一つ瓶が、ちょこんとおいてある。
なんだろ、この若干白い様な透明な液体。ぺろっと味見してみる。
・・・んーー。薄いレモン味?
ビミョーな味だが飲めないことはない。飲めと言ってるし、飲んでおかなきゃね。
私はぐいーっと謎の液体を飲み干す。一気飲みできるぐらいの量であった。
・・・。
さーこれで、今日はおしまい。
私はトイレをすませると、改めてベッドで横になる。
ついでに少し跳ねて遊ぶ。ぼよよーん。
それにしても、今日はほんと、驚きの連続だったな・・・。明日はどんなことが待っているのだろう?
そう思いながら、少しずつ意識は落ちていく。
・・・。
疲れが溜まっていたのか、しばらく経つと私はぐっすり眠ってしまった。
ぐぴー。