三度目の正直で、僕は彼女に人前で全裸になってくれるように土下座しました!

浮気現場に突入! しかし、そこには驚きの光景が!

 第四話 浮気現場に突入! しかし、そこには驚きの光景が!



 よくある浮気話の一つとして、たとえば長期出張の中、時間を見付けてこっそり帰宅して驚かせてやろうと画策した結果、浮気現場に遭遇してしまった――というもの。

 俺は今、まさにそんな絵に描いたような浮気現場に遭遇しそうな状況に心臓が気持ち悪くドキドキしていた。
 不埒なアナル開発器具を持ち込んでいたことがバレてしまい、芽衣の怒りを買い、俺は一晩をネットカフェで過ごすつもりでいた。
 しかしネットカフェで隣室のカップル(カップルだと思っていた)が実は男二人、女一人の組み合わせて3Pセックスを始めてしまい、露骨にその現場を俺に見せつけてくれた。
 そのために俺としても気分が高揚してしまって、ちゃんと芽衣に謝って、できることなら仲直りセックスと洒落込みたいところだった。
 だがしかし、深夜二時過ぎにマンションの前に戻ってくると、部屋に明かりが点ったままなのだ。

「……芽衣の奴、本当に浮気じゃないよな……」

 露出プレイは絶対に嫌だと断固として譲らない芽衣に俺は土下座した。
 三度の土下座を繰り返した。
 怒濤の頼み込みだった。

――嫌われても仕方無かった。

 ネットカフェから帰宅した俺は、マンション正面の道路から芽衣が待っているはずの部屋を見上げている。
 本当ならとっくに就寝しているはずなのに部屋には明かりが付いている。
 俺の帰りを待っていてくれているのかもしれないという甘い期待はしていない。

『今晩はネカフェで頭を冷やしてくるよ、ごめんね』

 とLINEでメッセージを送っておいたのだから。
 返信は無かった。
 気付いていないというわけではないだろう。
 意図的に返信を怠っているのだ。
 そこに芽衣の怒りを感じないわけにはいかない。

「……本当に浮気なのか……?」

 もしもそうなら、今現在、俺と芽衣の同棲先、いわゆる愛の巣と言っても過言では無いマンションの一室では、芽衣が他の男に抱かれているということか?
 すでに一戦を終えて、男の精液を受け入れた芽衣が男の胸に寄り添って甘い言葉を交わしているところかもしれない。


 
「考えすぎだよな……」

 いらない同人誌の読み過ぎで、寝取られ展開を考えたりもする。
 俺の前で芽衣が他の男に抱かれてしまい、初めは芽衣も拒絶の意思を示すのだったが、恋人の前で他の男に抱かれるといくというシチュエーションに快楽落ちしてしまうというやつだ。
 そしてその状況を前にして俺も興奮するってやつだ。
 寝取られ展開に理解が無い人からすれば、全くわけがわからない状況だろう。
 正直を言えば俺だって芽衣が他の男に抱かれることを許したくはないのだ。
 芽衣との将来を本気で考えている俺からすれば、芽衣の最初で最後の男でありたいと本気で思っている。
 そして芽衣もそう思ってくれているからこそ、俺が露出プレイを土下座で頼み込んだ時に、

『私の裸を、他の人に見られてもいいの?』

 と訊いてくるのだろう。
 もしも「見られるくらいなら良い」と答えてしまっては破局を迎えていただろうし、本当に俺も芽衣の裸を他の誰かに晒すことなんて絶対にしたくない。
 本当だ、本当なんだ。
 この点については絶対に信じて欲しい。
 そして、だからこそ芽衣の露出プレイが危ない綱渡りに過ぎて興奮のるつぼであることも理解して欲しい。
 絶対に、絶対に人目には晒したくなく芽衣の裸を、深夜の公園というシチュエーションで晒してやることで、誰かに見られてしまってはいないだろうかとドキドキしてしまうのだ。
 断崖絶壁に突撃するチキンレースのようなもの、そう理解してもらえればいい。

――そう理解してもらえればいいんだけれど、芽衣には結局理解してもらえずに今に至る。

 なぜか深夜の二時を過ぎても明かりの付いている部屋。
 このままネットカフェに戻った方がいいのか、それとも合い鍵を使って部屋にこっそり侵入した方がいいのか。
 迷う。
 悩む。
 なのに股間は固いまま。
 なんとなくマンションに背を向けて、暗い路地に向かってみるけれども途方に暮れてしまって、またマンション前に戻ってきてしまう。
 いろいろと頭の中にテキストが浮かんでくるけれど、もう俺の中では合い鍵を使ってこっそり侵入し、芽衣が何をしているのかを確かめざるを得ない気分になっている。
 そこに破局が待ち受けていようとも!

 ……まさか本当に浮気現場に巡り合わせることになると決まったわけではないんだけどもね。
 ほら今さっきネットカフェでまさかの露出乱交を見せつけられてしまったから、意識がエッチな方に向いてしまって仕方無いんだ。
 なにせ俺がマンションに戻ってきたのは芽衣と仲直りセックスがしたいがためなんだから。
 俺は自分に何度も言い聞かせる。

――大丈夫大丈夫、芽衣が浮気するわけないって。
 小学校来の付き合いで、今まで浮気らしい浮気もなかった。
 俺に浮気を怪しまれることを嫌って、あまり他の男と話をしたりすることもない純情一途な芽衣だったのだ。
 その代わりに女友達とはよく喋っていて、恋愛相談にはよく乗っていたらしい。
 なんだか評判が良いらしく、その相談者は後日、俺に「芽衣ちゃんを大切にするんだよ」と言ってくれたりすることもたびたびあった。
 たぶん「男に尽くす女」的な相談助言をしてきたんじゃないだろうか?
 芽衣はそんな女だった。
 良い子なんだ。

 わざわざ非常階段をとぼとぼ登り、芽衣がいるはずの部屋に辿り着く。
 夜風が冷たく、沸騰しそうだった頭を冷やしてくれる。
 ポケットから取り出した合い鍵を、妙にじろじろと観察してみる。
 この加工済み金属プレート一枚が俺の人生の転機になり得るのだと思うと震えてくる。
 鍵穴にそっと差し込み、祈るように静かに回す。
 カチャン――なんて物音を立てる事も許さずにゆっくり回して解錠する。
 一呼吸の後、かなりゆっくりとドアを開ける。
 その隙間から芽衣の嬌声がしてこないかと耳を澄ますが、全くの無音に思う。
 気配を殺すようにして侵入し、靴を脱いで廊下を進む。
 明かりの付いていたリビングの扉の前に立ち、再び耳を澄ます。

「……んっ……あぁっ……大きいぃ……っ」

――ええっ!!!!!!!!????

 あっけない程あっさりと芽衣の嬌声が聞こえてきて逆に仰天してしまう!
 え、マジで!?
 芽衣、本気で浮気しちゃってんのっ!?
 血の気が引く思いと共に、それまでギンギンに勃起していた股間が一瞬で萎える。
 切断したかのように存在感が消える股間。
 脂汗が流れ出し、心臓が飛び出そうなほどにドクドク脈打つ。
 身体が震えてきた。
 寝取られ展開とか考えていた自分が愚かしいほど、この現状に狼狽しきっていた。

「……こんなの……入るわけない…よ…」

 湿気った声で芽衣がそんなことを囁く。
 どうやら巨根の間男を相手にしているらしい。
 あれだけ馴染み親しんだ芽衣のきつめの膣が、どこの誰だかわからない奴にいっそう拡張されているのだと思うと吐き気が込み上がってくる。
 というか倒れそうだ。
 吐きそうだ。
 死にそうだ。
 いや、死にたい……!

 俺はドアノブに手を掛けていた。
 なんでだろうね、止めとけば良いのに。
 もう死にそうなのに自ら死地に赴くかのように。
 あぁ……これもチキンレースみたいなものかな?
 はは、自業自得ってやつなのか……

「芽衣っ!」

 俺は心より愛しい女性の名前を叫びながらドアを開け放った。

「――――ッ!?」
「――――!!!!」

 そこには芽衣がいた。
 芽衣が一人でいた。
 間男は存在しなかった。
 芽衣が一人でいたんだから、間男は存在しなかった。
 つまり浮気じゃ無かった。
 浮気じゃ無かったのだから良かったじゃないかというとそうでもなかった。
 考えてもみれば、一人で嬌声を漏らしながらオナニーしてるってこともあるわけで、俺はとんとその可能性については言及していなかった。
 まぁ……言及していたとしても予想は外れることになっていただろうが。

「な……なんで、いるのよ!?」

 はい。
 状況を整理しよう。
 リビングで一人いた芽衣ちゃん(俺の恋人・結婚を考えている)。
 リビングのテーブル(長く使うと思うから、けっこうなお値段の良品)に新聞紙を広げ、そこにパープルレッドな色味の妖しいアナルプラグを立てていた。
 もちろん、それは俺の馬鹿なお友達が用意してくれたアナルグッズの一つなんだけど。
 そしてそれが原因で俺はネットカフェに避難していたんだけれど。

 ……たぶん、たぶんだけれど、アナルグッズに興味を持ちだした俺に気を遣って、アナルプレイに慣れておこうと芽衣は思ったんじゃないかな。
 露出プレイは絶対に嫌だと断り続けてきたんだから、じゃあアナルプレイは許容してあげなくちゃいけないよね、そんな風に健気に思ってくれたんじゃないかな。
ありがたい。
 本当にありがたい。
 芽衣、お前は本当にいい女だ。
 きっと将来は結婚しような。

 ということでリビングの立派なテーブルの上で芽衣がアナルプラグをアナルに突っ込んでいるところに遭遇してしまった。
 ちょうど俺の方に尻が向いてしまっていたので、恥ずかしいところは全部丸見え状態なわけです。

 大丈夫大丈夫、芽衣、愛しているよ。

 ということで次回に続く。



 第四話 浮気現場に突入! しかし、そこには驚きの光景が! ここまで

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