第三話 ネットカフェで露出乱交プレイの少女
女はどうして男の嘘や秘密を暴くのが得意なのだろうか?
……いや、俺が芽衣を侮っていただけなのかもしれないけどさ、浮気な上手な人は上手に浮気するものね。
「これは一体なに? ねぇ、なにこれ!」
「………………」
半分悲鳴みたいな声で叫ぶ芽衣。
今ここで正直に「アナルストッパーです」と答えたところで激昂させるだけなので俺は詰責に黙する。
不出来な株のような形をしたアナルストッパーは、その類いの知識が豊富な友人によって届けて頂いた大切だけれどどうでも良いゴミ芥で、俺は自室のクローゼットの中に隠しておいた。
そして即日発見された。
「………………」
芽衣が俺の部屋のクローゼットを開けるなんてそんなに頻繁にあることではないのに、どうしてアダルトグッズを隠した日に限ってクローゼットの扉に手を掛けたのだろう?
別に天気が良いから日干ししようだとか、季節の変わり目だから衣替えだとかクリーニングに出そうとかってわけでもなく、だ。
「ちょっと部屋に入ってもいい?」
いつも変わらない口調で何気なく部屋に入ってきた芽衣に、俺はまだクローゼット中のアナルプラグに心配を寄せたりなんかしてなかった。
だって普通、クローゼットを開けたりしないじゃん?
でも今日の芽衣は違った。
なんかに引き寄せられるように自然にクローゼットに近づくと、その取っ手に手を掛けていた。
そのあまりの自然さに、俺は言葉を失っていた。
そんで、ガバッと扉を開けて、中をゴソゴソと漁った芽衣の手にはアナルグッズ。
「これは一体なに?」
「………………」
「ねぇ、なにこれ!」
「………………」
そして二人で借りてるはずのマンションの一室を追い出された。
食事抜きの刑だけでは済まなかったらしい。
どれくらいで芽衣の怒りが静まるのか見当が付かないので、ネットカフェなりで一晩過ごすことを考えながらも、事の原因たる友人に責任を取らせてやろうかと思ってスマホを手に取って……しかし止めた。
「……これで共犯者がバレるところだったかもしれない……」
『家を追い出されてすぐに連絡する相手』←これはいろいろ怪しまれるに決まってる
後で通信記録を確かめられて、それがあの変態友人だと知れたらば俺と芽衣の長きに渡る交際も終止符が打たれかねない。
俺は背後を振り返り、尾行が無いか確かめる。
『家を追い出されてすぐに助けを求める相手』←これもヤバい
大学生ともなるとこの辺の危機意識が嫌でも育つ。
中学生カップルや高校生カップルの破局話しは芽衣からいくらも聞かされたしなぁ。
他人の不幸は蜜の味とは言ったもので、破局話や浮気話に耳年増の女達、やたらめったらに不幸話しネットワークを巡らせて情報を蓄積し、今回、芽衣がアナルグッズを即発見するに至った後ろ支えをしていたのかもしれない。
う~ん……
『男はアナルグッズを買ってくるとクローゼットに隠すわよ!』
どんなさや?
俺はため息を吐いて、スマホを仕舞う。
仮に尾行があるなら尾行しろ、これもそれも芽衣の愛が成せる業なのだろうと諦めて受け入れることにした。
そうして素直にネットカフェで一晩を過ごすことにした。
――が、夜になって隣の個室でカップルがSEXを始めやがった。
深夜一時を過ぎた頃。
一晩過ごすつもりだったのだから出来るだけ奥で静かな場所に陣取ったつもりだったけれど、そんな場所選びだからネカフェSEXを謳歌しようってカップルが寄りついてしまったらしい。
平日の晩なのだからラブホで勤しめば良いだろう、わざわざネカフェでヤらなくても。
規則的な振動音と共に、押し殺した女の子の嬌声が漏れてくる。
せっかく寝入ってたところなんだけどもなぁ。
(でも平日にネカフェでヤるなんて、お金のない若いカップルなんだろうな)
漏れる女の子の声は、ちょっと判別が難しいけれど、やっぱり若いように聞こえる。
腰を振るリズミカルな振動音、こちらはけっこう老練さが感じられる。
スピード感とストローク感、そして力感――これは俺が寸評するのは烏滸がましいレベルに思う。
一体どんなカップルだろう?
援助交際でJKが中年親父にヤられているんじゃないかと想像すると股間が硬くなってくるけれど、そんなカップルの入室には店側が注意を払うだろう。
となると?
そんな隣室のセックス模様に意識が向いてしまって全く眠れない。
聞き耳を立てるというのはなかなか集中力を使うもので、そのおかげで意識が冴えてしまう。
(明日も朝から講義なんで勘弁して欲しいんだけども……ぬ~ん……気になる)
期待半分、迷惑半分で視線を泳がせていると、店で借りたブランケットの上に一枚の紙切れが落ちているのに気付いた。
手に取る。
ピンクの蛍光ペンでメモ書きがなされていた。
「就寝中にすみません
突然ですけど隣でエッチさせてください
できるだけ静かにヤりますから、お店には通報しないでね(*^_^*)
黙っていてくれるなら上から覗いても良いですよ」
……あぁ……俺が就寝中だと知っているってことは覗かれたんだな~と考える。
まずはそちらを考える。
上から覗かれたのか~、はっはー、こやつらめ。
全く、近頃の若者はなってないな、プライバシーの問題だぜ?
けしからん!
それにこんな狭いネカフェでセックスとはな!
周りの迷惑を考えたらどうだろうか?
俺は明日も講義あるんだよ、寝なくちゃマズいんだよ?
明日の講義はなんだっけ?
なんか小難しい社会学だったような気がするけどさ~
う~ん……
……
俺は立ち上がった。
こっそりと。
そして仕切りの上から隣の部屋の状況を覗かせてもらった。
しょうがないじゃん、俺、男だし、エロいの好きだし。
「……!!」
そこには予想外の光景が広がっていた。
(三人いる! 3Pかよ!)
広くない個室に男二人、女一人でヤっていた。
さすがに二穴姦だとかアクロバティックに交わる広さはないので男が交互に性交する様子だった。
大きめのソファベッドに股を開いて腰掛ける女の子がなかなか可愛い、というかかなり可愛い!
けっこう華奢な身体をして、あばら骨がうっすらと浮いている。
これで顔が不細工ならガリガリだと言われて見向きもされないが、顔の可愛さで逆転サヨナラホームラン級のスタイルに昇華している。
対して男二人は醜男だ。
俺なんかじゃ絶対に敵わない大男が二人、一人は様子見待機しているが、もう一人は一心不乱に腰を振って、大きめペニスで女の子をガンガン攻めている。
ネカフェで3P
覗き見OK。
美少女と大男二人。
よくわからん状況だけれど、女の子は相当気持ち良さそうな表情だ。
(……でもなんだ、なんか不自然だ……)
ちょっとした疑問が脳裏によぎったところで、女の子が俺に気付いた。
俺に気付いて、ニッコリ微笑んだ。
そして小さく手を振った。
余所向く女の子に苛ついたのか、男の腰振りが叱責するように強力なモノになり、一撃の下に女の子のエッチな表情の戻した。
「……あっ、んっっ……!」
か細い喘ぎ声が艶めかしくてエロい。
俺は生唾を飲み込んでいた。
女の子の小さな股間に男のペニスがずぼずぼ出し入れされている。
待機しているもう一人の男のペニスもなかなかの大きさだ。
こんな3Pの光景を間近で見られるなんて僥倖だった。
が、なにか不自然さを感じるとすれば……あれだ、女の子の半脱ぎ状態の白いワンピースドレスが一つ。
なんか童貞殺しのファッションそのまんますぎて白々しい。
サイドテールの髪型もオタク層を狙ってる感じだし、化粧の感じもそうだ。
清純系の少女が裏ではヤりまくってる状態って言ったら半分正解そうなんだが、俺に覗かれて笑顔で手を振っていた辺りも鑑みると……?
(ネットでオナニー配信する美少女……)
彼氏に困る事も無さそうな美少女が、カメラに向かっておまんこ広げている映像なんかは最近ちらほら見掛けるようになってきている。
単純にセックス無しの売春と割り切って小遣い稼ぎしているだけの少女から、なんだろう、自傷行為的にカメラに写っている少女もいるもんだ。
で、目の前で犯されている少女はどうかと言えば、後者、自傷的なセックスに思える。
さっきから逞しいピストン運動を続ける男達は、たぶん、髪や胸に触れることは禁止されているんじゃないだろうか?
それにキスなんて絶対禁止。
そういう条件で買われた大男二人が――男根二本が美少女のエッチなところをグチャグチャにしている。
俺に見られて悦んだ少女の、その心はわからない。
全世界におまんこ全開映像を配信しちゃう女の子の心の闇なんかが広がっているのかもしれないけれども……?
ま、それはそれ。
俺は覗き見OKなのに乗じて三者のセックスを堪能させて貰った。
これも考えようによっちゃ羞恥プレイ・露出プレイに数えることもできるよね!
結局二人の男は合わせて一時間弱、美少女を犯し続けたけれど、最終的には射精無しの締まらない終わりになった。
俺は男二人にぼそっと訊いていた。
「射精無しだと辛くない?」
「……そういう約束で金を貰ってるんだ……」
疲れた風に答える男達の背中が寂しいそうで、そうなってくるとただで覗き見した俺が一番得した気分になってしまう。
ん、女の子が一番得したはずだろうって?
……うん、そうなのかもしれない。
わからないけど。
時計を見ると深夜二時。
俺は無性に芽衣を抱きたくて仕方無くて、土下座して謝り倒して、仲直りSEXと洒落込む決意の元で部屋の合い鍵を握りしめてネットカフェを後にした。
そうしてタクシーでマンション前に戻ってきて気付く。
「あれ? 部屋にまだ明かりがついてる……普段ならもう寝てるだろうに」
俺は怒られるのが怖かったのと、なにやら嫌な予感(芽衣が俺のいない隙に男を連れ込んで浮気している可能性)がして、静かにドアのロックを外して部屋に入ったのだ。
第三話 ネットカフェで露出乱交プレイの少女 ここまで