ツレがスケベ小説に染まりまして……

窓際でギリギリ露出セックスに燃える二人

第1話 窓際でギリギリ露出セックスに燃える二人


 ○すれ違いのセックスはビルの谷間で……

都会の夜空では、星の光どころか青白い月の輝きも拝めない。
チカチカと明滅するネオンの明かりと、そそり立つビルの群れ。
無理をして見上げても、小さくて真四角な黒い天井のような夜空が浮かんでいるだけ。

吾朗にも、それは分かっていた。
夜になっても、ムッとした熱帯夜の空気を取り入れるだけ。
そんな欲しくもない付加価値までオマケされるのを知ったうえで、彼は窓を開けた。
築30年。老朽化著しい12階建てマンションの6階の一室から、上半身を乗り出すようにして首を振り回していたのだ。

なぜ、こんなことをするのか?

部屋の窓から身を乗り出させた吾朗は、服を着ていなかった。
外を歩く者。
モノ好きに見上げる者。
偶然に男の存在に気づいたとしても、それ以上のことには恐らく気づきもしないだろう。

だから説明しておく。
吾朗は裸なのだ。
部屋の中に隠され外気に晒されていない下半身も含めて、産まれたままの全裸なのである。

「吾朗ちゃん、そんなことしてたら落っこちちゃうよぉ」

その彼に向けて、眠たげな声が掛けられた。
若い女性である。
若いというより、子供っぽいあどけさを残した娘である。

因みに、彼女の警告を無視して窓から上半身を躍らせている吾朗も若かった。
凛々しく太い眉をマブタの上に描いているが、子供っぽいあどけさなら、声を掛けた娘に負けず劣らずである。

木下吾朗とその彼女、山口涼花は、同棲している。
故郷はそれぞれ、日本列島の南と北くらい離れているが、都心の大学に進学すると同時にバイト先の店で知り合ったのだった。
現在、共に20才。
将来を誓い合い、立派な社会人になれさえすれば、結婚もいずれという、おぼろげな夢を抱えながら。
既に肉体関係だけは毎夜しっかりとこなして、それなりに立派な半夫婦生活を満喫していた。

「ねえ、何か見えるのぉ?」

「いや……何も……」

「ふ~ん、なんにも見えないんだ。吾朗ちゃんってさ、そういう無意味なことに体力を使うのって、好きだよね。どうせなら、もっと他に使ったって……」

「他に使う? 涼花、それって何にだよ?」

「そんなの……自分で考えてよ! 女の子のわたしに言わせないで!」

まどろむような涼花の声音だったが、吾朗との会話が進むたびに不貞腐れていき、最後には苛立っても聞こえた。

窓際からなるべく引き離すようにして、安物のベッドが設置されている。
シングルとダブルの中間くらい。
成人の男と女がピタリと密着してちょうど良いような、そんな縦長のスペースを涼花は一人で独占したまま、目尻をやや上げ気味に、瞳には寂しそうな表情を浮かべていた。
それでも振り返ろうとしない彼氏の背中を、じっと窺うようにして。

デートとショッピングを混ぜ込んだ付き合いを始めて、まだ1年余り。
バイトで貯めた資金を『エイッ!』と捧げて、プチ贅沢なホテルで結ばれて、まだまだ半年余り。

中年夫婦の合い言葉『倦怠期』とは、少々違う。
だからといって、涼花にも、吾朗にも、心をときめかす異性が他にいるわけでもない。
けれども、今の二人はなんとなくぎこちない。
滑らかに噛み合っていた歯車と歯車に、小さな埃が挟まっているような……
そんな些細な何かが……

「ねぇ……しよ。わたし……吾朗ちゃんの身体と、もっと一緒になりたいの」

不貞腐れて、苛立って、暫くの間を置き、そして漏れたのが案外本音かもしれない。
声を殺して、少し甘えて、少し恥じらってもみせて、涼花が訴えてきた。

吾朗と同様に、全裸の身体に薄い毛布を巻き付けたままベッドから下りる。
部屋の中よりも明るい窓辺で、発達した背中の筋肉の一部と、角ばった尻を向けたままの男を潤んだ眼差しで見つめて、一歩、二歩と足を進めて……

バサリと音がした。
乱れたドレスのように纏わせた毛布が、涼花の肌を滑る。
フローリングの床に不規則な形のまま落下した。

「吾朗ちゃんの身体……あったかい……」

「涼花……お前の肌だって……」

身長180センチの身体を、身長160センチの身体が覆い被さろうとしていた。
硬質な肉体に、柔らかで繊細な肌が密着し、吾朗は涼花の胸の鼓動を。
涼花は吾朗の、漲り始めた男の精を汗ばむ肌に感じて。

「今夜はここで……どう?」

「え~っ、恥ずかしいよ……でもぉ、吾朗ちゃんがそう言うなら……」

ニヒルな男を演出する吾朗が、涼花の羞恥心を懐柔させる。
そして、そうと決まればいうことだろう。
鍛えられた男の腹筋が、背中に乗せた彼女ごと二人を部屋の中へと押し返していた。

手を伸ばせば開け放たれた窓辺に届く。
そんな処で、立ったままキスを交わした。

お互いの背中を撫でさすり合い、胸と胸を固く触れ合わせたまま、唇どうしが繋がっている。
1年強で会得したベストな首の傾げ具合で、吾朗の舌が涼花の舌に絡んだ。
男臭い唾液と、楚々とした女の匂いがする唾液が混ざり合い、ミックスされて、二人の口内を循環していた。

「はむぅ、ちゅぶ……吾朗ちゃんのぉ、おいしい……」

「じゅぶ、じゅばぁ……涼花のだって……」

男女間の深い交わりは、接吻という前菜から。
吾朗と涼花の濃密なキスは、暫くの間続いた。



 第1話 窓際でギリギリ露出セックスに燃える二人 ここまで


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