洞窟の奥へ 淫獣の気配


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第5話 洞窟の奥へ 淫獣の気配


 ○洞窟の奥へ

 岩場は入り組んでいて、ボートは入り江への奥へと流されていった。
 右を向いても左を向いても辺り一面は岩だらけである。
 岩肌には毒々しい色の苔がむしていて、一際不気味さを醸し出している。
 人が踏み入れた形跡は微塵も感じられない。

 球の乗るボートはゆっくりと流され、まもなく洞穴へ入っていった。
 洞穴の中は薄暗く湿っぽく、外よりもかなり冷たく感じられた。

 球とイソギンチャクの戦いはなおも続いていた。
 いくら避けても次々に襲ってくるイソギンチャクの群れに根負けしそうになっていたが、抵抗の手を緩めることはなかった。
 だが、これらイソギンチャクから受ける凌辱など、この先、球の身に降り注ぐ惨劇から考えるとほんの序章であると気づくには、それほどの時間を要しなかった。

 ゴムボートは洞穴の最奥部まで到達し、ようやく動きが止まった。
 外からの光はほとんど届かないからか、かなり暗く鬱そうとしていた。
 意外にも天井は高く、時折、天井から垂れるしずくの音が洞穴の中で反響していた。

 それにしても変だ。
 どうしてこんな洞穴の奥に連れて来られたのだろう。
 しずくの音以外何も聞こえない。
 静けさが何か不吉なことの前兆のように思えてならなかった。
 もうひとつ不思議なことがある。
 先程まで球に執拗に絡みついていたイソギンチャクの群れがいつの間にか消えてしまったのだ。
 球は不可解に思い、周辺の水辺や岩肌を見廻した。

(どうしたんだろう?イソギンチャクはどこへ消えたの?やれやれ。何よ、あのイソギンチャクの大群は。もうエッチなんだから~)

 球がホッと一息ついたその瞬間に異変が起きた。
 球が乗っているゴムボートが、左右に大きく揺れ出したのだ。
 波など全くないし、地震が起きた気配もない。
 何か巨大なものが球の乗るボートを揺すっているかのような・・・。

「キャ~~~!!助けて~~~!!」

 ゴムボートは大きく傾き、球はついに水面に投げ出されてしまった。

「にゃあぁ~~~!!うっぷ!!」

 球は泳げる方であったが、あまりの突然の出来事に気が動転してしまった。
 転覆したゴムボートにしがみつこうとしたが、うまく掴むことが出来なかった。

「うぐぐっ!!」

 次の瞬間、ヌルリとした感触が腹に触れたかと思ったら、あっという間に球の胴体に絡みついて来た。


第5話 洞窟の奥へ 淫獣の気配 ここまで

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