気分爽快な復讐劇へ


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第三十五話 気分爽快な復讐劇へ

◆理事長と対決する決戦の日曜日

「理事長先生、愛華さんから手を引け、と言うメールには従って下さったようですね」
「何!? 貴様、あのメールは……」
「思い出してもらえましたか? 実はあのメールを送ったのはこの私です。興信所に勤める知り合いに調べてもらったら、いろいろ面白い物が手に入りましてね。どんな写真があったか、出してみましょうか?」
「いや、待て!……女たちには見せないでくれ、頼む」
「では、急いで確認だけして下さい」

 やはり理事長は馬鹿ではない。頭の切れる狡猾な悪党だ。ついに絶対的優位に立った俺は、ホクホクしながら持参していた写真を数枚パラパラと見せる。理事長が力づくで強奪しようとしても、力勝負なら負けることはない。そして無駄なあがきはしない理事長はもう全部見ようとせず、妙に落ち着いた口調で言った。

「何が目的だ。言ってみろ」
「もちろん愛華さんとの交際を認めて頂くことですよ。それから出来ればもう1回学校に雇ってもらいたいですね」
「それだけではあるまい。一体いくら欲しいんだ?」

 拍子抜けするくらいアッサリ俺の要求を飲んだ理事長は、早手回しにそう切り出した。

ーー女たちが戻って来るまでに何とか話を丸めこもうとしているな……悪いが、そんなに簡単に俺の復讐は終わりやしないんだぜ……

 理事長は体力があるだけで頭のにぶい男だと思ってるに違いない俺を見くびり、ある程度の金で解決を図ろうとしているのだろう。ヤツが大切にしている妻の木村校長には、絶対浮気写真を見られたくないらしい。実はすでに校長は全部知っていることをヤツは知らない。俺は理事長の愚かさを心の中で嘲りながら、本心を隠して応対した。女たちが帰ってからが本当の勝負だ。

「それだけですよ、理事長先生。私はあなたのようなワルではありません」

 チッと舌打ちして嫌な表情を見せた理事長に、俺はささやかな達成感を味わったが、その時愛華さんと木村校長が連れ立って帰って来た。

ーーさあ、お楽しみはこれからだぞ……

 理事長に対する俺の復讐はいよいよクライマックスを迎えていた。

 校長と愛華さんが戻って来て席に着くと、俺を丸め込んだと思っている理事長が白々しく言った。

「もう話はついたぞ、愛華」
「え、どういうことですか、お義兄さま」
「見合いの話はなかったことにしよう。先方にはわしが頭を下げて、よく謝っておいてやる」
「ありがとうございます、お義兄さま」

ーーイケすかない野郎だな。いちいち恩着せ構しいんだよ……

 手のひらを返したような理事長の豹変ぶりに、まだ赤い顔で興奮冷めやらぬ様子の愛華さんは、戸惑いながら感謝の言葉を口にする。だが勝手に進めておきながら、見合い話の解消を自分が「頭を下げて」やるのだ、と言わんばかりの話しぶりはヤツの腐り切った性根を如実に物語っていた。今度は校長が言う。

「それでは、愛華と田島さんの交際をお認めになるのですね、あなた」
「本人同士が好き合っておるのなら仕方あるまい」
「どうもありがとうございます、理事長先生」

 俺もここでは形通り頭を下げておいた。理事長は内心しめしめと思っているのだろう、さらに恩着せ構しく続けた。

「ついては愛華と付き合う男を無職にはしておけん。こんなことは異例中の異例だが、彼をもう一度山川女子の体育教師として採用しようと思う。文句はないな、みんな」
「もちろんですわ、お義兄さま」
「異論はございません、あなた」

ーー甘いんだよ、この鬼畜野郎!

 ヤツの得意げな顔を見ていると、俺はそう吐きかけてやりたい衝動に駆られ、ここでいよいよ牙を剥いて見せたのである。

「ありがとうございます、と言いたい所ですが、理事長先生……」
「な、何だとお……」

 俺の思わせぶりな口調に異を感じた理事長は、アリアリと動揺の色を浮かべる。俺はヤツの慌てぶりを楽しみながら、ゆっくりと話を切り出した。

「私も愛華さんと付き合わせて頂くに当たって、これだけははっきりさせておきたいことがあります。理事長先生、この写真をどう説明して頂けますか?」
「やめろ、この馬鹿者っ!」

 俺の出した写真が、愛華さんとラブホテルの入口をくぐる場面であることを見てとった理事長は、もう恥も外聞もなく本性を剥き出しにして俺に飛び掛って来た。と、その時。

「キャーッ!」
「やい、理事長っ! 動くなっ!」

 理事長の後方にあった収納庫から驚くべき素早さで飛び出して来た百貫デブが怒鳴ったのだ。女たちは貫太の存在を知っていたにも関わらず黄色い悲鳴を上げる。なぜなら貫太はいつの間にか服を脱ぎ捨て、赤褌一丁と言うとんでもない格好だったからだ。

ーーバカか、コイツ……

 貫太には悪いが、俺はその絵に描いたようなマヌケな姿に吹き出しそうになっていた。俺と取っ組み合いに入ろうとしていた理事長も後ろを向き、口をアングリ開けて驚きの表情を浮かべている。だがマンガのような登場の仕方で笑わせた貫太の次の行動に、女たちは今度こそ本物の悲鳴を上げ一座は凍り付いてしまった。

 何とヤツは理事長と俺の頭上めがけて隠し持っていた拳銃をぶっ放したのである。そして女たちの悲鳴をかき消すような大声で怒鳴ったのだが、それは貫太が初めて見せる暴力団幹部の息子らしい凶悪な姿だった。

「理事長! そいつから離れて両手を上げな!」

 本物の銃のデモンストレーションに青ざめた理事長は、指示に従い俺から離れてソファーの側に立つと、貫太に向かって両手を上げた。

「俺は信一の昔からのダチで、黒岩ってもんだ。見ての通りヤクザな仕事をしている。命が惜しかったら絶対に逆らうんじゃねえぞ! おい、お前ら、理事長さんの服を脱がしてやりな」
「な、何を馬鹿な……沙希、何をしている、早く非常ボタンを押して警察に通報しろ……」
「うるせえっ!」

 理事長はアタフタして、必死に校長に救いを求めるが、あいにく彼女もグルなのだ。ヤツの思惑通り動いてくれるわけはない。そして貫太が2発目の銃声を響かせると、ためらっていた女たちも一緒になって俺たちは理事長を裸に剥いていったのである。

「お、オイ、やめろ! そんなことしてタダですむと思っているのか、沙希! 愛華!……」

ーー往生際の悪い野郎だぜ……

 理事長は両手を上げた姿勢を崩せないが、口だけは達者にしゃべり続ける。すると拳銃を片手にやって来た貫太は、俺が思ったのと同じ言葉を口にすると、何と赤褌を脱いでそれを理事長の口に詰め込み塞いでしまった。

「ははは、ざまあねえな! 俺のチンポの臭いでもかぎながら、黙ってろ!」

 理事長の浅黒い悪党面が屈辱で赤みを帯びたが、貫太はガッチリと褌の口かせを完成させてヤツの言葉を封じてしまった。そして、もう何の邪魔も入らなくなった俺たちは、あっと言う間に理事長の薄汚い全裸を晒してやったのである。

「よし、それじゃみんなコイツが暴れないように、押さえててくれ」

 貫太は得意の縄掛けで理事長を縛り上げていったのだが、その縄は女たちに使った柔肌を傷付けないソフトな物ではなく、やたらとケバ立ちの目立つ麻縄であった。それは理事長自身が浮気女性を緊縛するのに使用したと思われる、シクシクと肌に刺さって痛そうな代物だ。

「理事長さんよ、アンタが縛った女たちは、みんな痛い目をしてたんだぜ。少しは思い知るが良い」

ーーははは、コイツ、嫁さんに裏切られてることに今頃気付いて参ってるんだろうな……

 貞淑な妻である校長も、その妹の愛華さんも、助けてくれるどころか、ハッキリと俺たちに協力して体を押さえつけているのだ。だが、気付いた時にはもう遅い。理事長は、その妻や義妹の手も含めて、俺たちの慰み者になる運命であった。



第三十五話 気分爽快な復讐劇へ ここまで

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