第5話

「ダメ……ですか?」

 なんだか変なことを訊いてしまったようで顔が赤くなる一方だが、恥ずかしさに耐えて咲はお姉さんの返事を待つ。
 少しの間を置いて、お姉さんは小さく顔を振った。

「ううん、いいわよ。……そっか、さっきの話で興味持ったんだ」
「え、あ、いや……その、まぁ……」

 お姉さんの呟きには否定したかったところだが――自分から話を振っておいて「興味がない」では筋が通らない。
 何より、ここで「違う」などと言ってしまっては、続きを話してくれない気がした。
 咲の曖昧な返答をYESととったのか、お姉さんは一つ頷いて思い出すように空を仰ぐ。

「んー……でも、そうね。思い返せば色々やってきたけど、基本は同じね。脱いだ場所に服を残して、何も持たずにお散歩するの」
「お、お散歩……ですか」
「そう、今日のもね。服はここのトイレに置いて、コートだけ着て移動して……で、移動先でコートを置いてお散歩。ね?」
「はぁ……」

 そこにあの強風で、コートが飛ばされたというわけだ。
 一歩違えば破滅しかない恐ろしい趣味で、世の中広いものだと咲は素直に感心した。
 こういう特殊な行為は自分とは縁遠い世界の話で、人生において関わることはないだろうとずっと思っていた。
 けれどよくよく考えると、咲は既に――未来に起きるとはいえ――”身近な例”を目にしている。

「あの、例えばどこでやったんですか?」
「そうねー……さっきの川辺以外だと、公園、マンション、電車に職場……もちろん人のいないタイミングを狙うわけだけど、改めて考えると、私、結構無茶してるなぁ」
「がっ……学校、とか……やりました? 裸で廊下に出たりとか」
「えぇ、もちろんよ」

 当然のように頷かれ、咲は面食らってしまった。
 何か続けて聞きたいことがあった気がするのだが、それよりも驚きで言葉にならない。

「あ、でも放課後とか早朝とかだけどね。ちゃんと人がいない時にやらないとダメよ?」
「はぁ……って! 私、やりませんよ!?」
「あら、そうなの?」
「……っ、当たり前です!」

 未来の出来事が頭をよぎって、返答に一瞬詰まる。
 咲のそんな弱々しい返事に、お姉さんは「ふぅん」と目を細めた。

「あんなに熱心に聞いてきたのにぃ?」
「〜〜〜〜っ!!」
「裸で学校の廊下に――」
「――や・り・ま・せ・んっ!!」

 まるで問い詰めるような口振りにだんだん恥ずかしくなってきた咲は、真っ赤な顔をしてずいっと身を乗り出した。
 お姉さんはそんな咲の主張を聞いたんだか聞いてないんだか、ぼんやりと地面を見つめて「そっかぁ」と呟く。

「……ざーんねん。でもそれなら、他のアドバイスはいらないわね」
「アドバイス?」
「うん。見つかりそうになった時とか、一番の露出ネタとか、そういう体験談。露出やりたいーって娘になら、もっと色々教えてあげても良いんだけどな〜」

 ちらりと、お姉さんの目線が咲を捉える。
 そのあからさまな視線から目をそらし、咲は逃げるようにうつむいた。

(そりゃ、聞いておきたいけど……さ)

 スカートの端をぎゅっと握り込む。
 あれだけ自身の行為を見てきたのだ。そういう行為に微塵も興味がない――というと嘘になる。
 しかし、だからといって実践するつもりは毛頭ない。
 本当に事に及んでしまった時に備えて、予備知識を仕入れておきたいというのが主たる理由だ。

「「……」」

 しばしの沈黙が流れる。
 このお姉さんは、咲が「やる」と言わなければ教えてくれないだろう。
 あんな未来が現実になってたまるか。けれど、もし実現してしまったら。
 今だけの偽りの言葉を吐き出すのは簡単だが、口に出したが最後、本当にやるハメになりそうで――。
 そんな想いが交錯して、咲は取っ掛かりが掴めなくなっていた。

 ふいに、押し黙ったまま完全に硬直した咲の頭を、ポン、とお姉さんの手が優しく撫でた。
 何事かと咲が見上げた時には、お姉さんは立ち上がって、うーんと伸びをしていた。

「――?」
「さって、そろそろ帰らないと時間に間に合わないや」
「え、もうですか?」
「うん。実はこれから東京に帰るの。だから、もう時間切れ。ごめんね。あなたが昔の私のまんまだったから、嬉しくなってつい意地悪しちゃった」
「え、え……? あの、待って!」

 よっとボストンバッグを肩にかけたお姉さんを慌てて呼び止め、しかし何も言えずに固まってしまう。
 聞きたいことはまだまだあるのに――けれど、お姉さんはもう行かなくてはならない。
 お姉さんは首を小さく傾げて咲の言葉を待ってくれているのに、言葉が出なくて気ばかりが急いていく。

「あ、う……その……ま、また、会えますか!?」
「うん? そうねぇ……あなたが私みたいになったら、きっとまた会えるよ」
「……お姉さん、みたいに……?」

 お姉さんはふっと微笑み、ぽかんとする咲の耳元に顔を寄せた。

「――大丈夫。きっと、気持ち良いから」

 その優しい囁きは妙に艶っぽくて、咲の心の奥深くにじんと染み込んでいった。

第5話ここまで


第一話

 未来視できる少女が見た、自分の露出行為

第二話

 教室で全裸露出プレイを楽しむ未来の咲

第三話

 コートの下は全裸な露出狂のお姉さん

第四話

 美人なお姉さんが露出する理由

第五話

 露出狂への階段を登る少女

第六話

 ついに下着を脱いでノーパンになる女子中学生

第七話

 トイレで全裸露出する未来の自分からの露出のお誘い

第八話

 露出狂なお姉さんへのほのかな憧れを胸に、教室で脱ぎ出す少女

第九話

 校内で全裸露出する咲ちゃん14歳

第十話

 超絶ピンチ!!露出プレイを楽しんでいたら、人が来たよ!

第十一話

 女子中学生が教室でオナニー、そのまま絶頂へ!

第十二話

 下半身を露出したままで教室で教師とご対面

第十三話

 数年後、コートを羽織った露出狂の女がそこに

最終話


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